高校化学 基礎編

第1講

高3 スタンダードレベル化学 〜理論編〜 テキスト 第 1 講第 1 章 化学計算の基礎

化学量と物質量化学量

 物質は原子の集合体であるため,化学計算のほとんどは,原子1個の量と個数を使ってお
こなう。しかし,原子1個の量を質量で表すと非常に小さく,また,物質を構成する個数は
非常に多いため,ともに取り扱いが不便である。よって,原子1個の量,そして個数をどの
ように扱うかが化学計算では最も重要な基本事項である。

(1)原子量


・原子量
質量数 12 の炭素原子(12C)の質量を 12 としたときの,他の原子の相対的な質量。1mol の 質量(モル質量:g/mol)と一致する。

 

・元素の原子量

通常,陽子の数が同じ原子(同位体)は化学的性質がほぼ同じであるため,同じ元素として 扱っている。よって元素の量を扱うときは同位体の相対質量の平均値を使用する。これが元 素の原子量であり,周期表に掲載されている数値である。
元素の原子量=Σ[(同位体の相対質量)×(同位体の存在比)]

(2)分子量・式量


・分子量
分子を構成している各原子の原子量の総和を分子量とよぶ。
CHの分子量
と の原子量をそれぞれ 1,12 とすると,
12+1×4=16


・式量金属の単体やイオンで構成される物質のように,分子を形成しない物質の場合には,結晶 を構成する原子数を最も簡単な整数比で表し,組成式とよんでいる。この組成式を構成する 各原子の原子量の総和を式量とよぶ。
NaCl の式量
Na と Cl の原子量をそれぞれ 23,35.5 とすると,
23 + 35.5 = 58.5

 

(3)物質量

物質を構成する粒子は非常に多く,個数単位では扱いにくいため,アボガドロ数N(6.02 × 1023 個)の集まりを 1 mol とし,mol という単位で表す物質の量を物質量とよぶ。

アボガドロ数 Nとは 12= 12 g 中に含まれる炭素原子の数であり,6.02 × 1023/mol をアボ ガドロ定数とよぶ。

☆原子量や mol はきちんと理解して使っていこう。そうすれば,基準の変更などにもスムー ズに対応できるはずである。また,分子などについて同位体を考慮する問題では,種類を 問われているのか,存在比を問われているのか,きちんと確認しよう。

 

第 1 講 演習問題

 

1

白金は,原子番号 78 で,おもに四種類の同位体が存在する。同位体の存在比の多い順 番に並べると,存在比 34% の同位体の中性子の数は 117 個,同 33% では 116 個である。存 在比が三番目の同位体の中性子は 118 個,四番目の中性子は 120 個とすると,四番目に相 当する同位体の存在比は何 % か。整数値で答えなさい。ただし,上記四種類以外の同位 体の存在比は 1% 以下であるため,計算上無視してよいものとする。また,白金の原子量 は 195.1 とする。

 

1.   5% 

 

高3 スタンダードレベル化学 〜理論編〜 テキスト 第 1 講

 

2

次の文章を読み,各問いに答えなさい。
原子は小さいので,原子 1 個の質量(絶対質量)も非常に小さい。このような絶対質量の
数値では取り扱いが困難である。そのため質量数 12 の炭素原子 12C1 個の質量を 12 とし, この 12C1 個の質量 12 に対するそれぞれの原子の質量を相対質量として求める。

元素には 質量数が異なる同位体が存在するので,それぞれの同位体のうち放射性でない同位体(安 定同位体)の相対質量を地球上の天然存在比を用いて平均として算出したのがその元素の 原子量である。

原子量は相対質量なので単位がない。物質を取り扱う場合には,質量や 体積を使う必要があり,単位が必要である。そこで,12の相対質量 12 に g を付けた量を 1 単位としたのが物質量である。

 

問1 水素の同位体1H2H3Hの炭素12(12C)を基準としたときの相対質量はそれぞれ 1.00785,2.014102,3.010440 である。このうち 3は放射性で,自然界にはこの 3 種の水素 同位体がそれぞれ 99.9885%,0.0115%,および極微量存在する。水素の原子量を小数点以 下 3 桁まで求めなさい。

 

問 2 自然界に存在する水素分子には質量の異なるものが何種類存在すると考えられるか。

 

問 3 質量の異なる水素分子の中で,最も多く存在する分子と,2 番目に多く存在する分子 の比の値を有効数字 2 桁で求めなさい。

 

 

2. 問 1   1.008    問 2    6種類    問 3     4.3 × 103

 

3

 

3

問 1 標準状態で 560 リットルの体積を占める理想気体の水素について以下の問いに答えよ。

23ただし水素の原子量は 1.0 とする。また,アボガドロ定数は 6.0 × 10 (/mol)とする。

 

(1) 水素の物質量は何 mol か計算せよ。 (2) 水素分子の数は何個あるか計算せよ。

 

問 2 ある容器に,標準状態で 1680L の混合ガスが充填されている。混合ガスは,ヘリウム,

窒素,酸素からなり,それぞれの体積組成は,30%,50%,20% である。この容器内に

23存在する原子の総数はいくらか。最も近い値を選べ。アボガドロ定数は6.0×10(/

mol)とする。
ア 2.3 × 10
25イ 4.5 × 1025ウ 5.4 × 1025エ 7.7 × 1025オ 9.0 × 1025

 

 問 1     (1) 25mol        (2) 1.5 × 1025 個        問 2  エ 

 

 

第 1 講 確認テスト

高3 スタンダードレベル化学 〜理論編〜 確認テスト 第 1 講

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1次の文中,( A ),( B ),( C )に最も適合するものを,それぞれ A 群,B 群, C 群のイ~ホから選びなさい。

(1) 天然のホウ素には 10が約 20%, 11が約 80% 含まれている。 10と 11を互いに ( A )という。 10と 11に含まれる中性子の数はそれぞれ( B )である。原子の相対質量はその質量数とほぼ等しいので,ホウ素の原子量は約( C )である。

A:イ 同素体 ロ 同位体 ハ 異性体 ニ ラセミ体 ホ 同族体 B:イ 5個と5個 ロ 5個と6個 ハ 10個と5個 ニ 10個と11個 ホ 5個と11個
C :イ 10.0 ロ 10.2 ハ 10.5 ニ 10.8 ホ 11.0

 

1A:ロ   B:ロ   C:ニ

【解説】

C:10 × 0.2 + 11 × 0.8 = 10.8
平均値であるため、存在率の高い 11 に近い数値になることから,ニの 10.8 と答えること もできる。

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2標準状態で,ある気体 4.5L の質量は 6.5g であった。この気体の分子量として最も近い

値はどれか。 ア 28 イ 30 ウ 32 エ 38 オ 44 

 

2ウ 

【解説】

気体の分子量を とすると,4.5 6.5

22.4 M= 32.4